Reducing engineering to its fundamentals, to get you even closer to the original recording.
MCカートリッジ
2024年4月5日発売
スペック表にアルミ・カンチレバーという表記を発見した時、私はXtraX MCの価格を見返しました。日本人であれば誰もがアルミを採用したカンチレバーより現在流行している素材のカンチレバーを採用しているカートリッジの方が“高級品”だと思ってしまうことでしょう。私も少なからずそう思っていたからです。しかし、XtraX MCのサウンドを聴いた瞬間、アルミ・カンチレバーが採用されている事などどうでもよくなりました。まるでスタジオで最終テイクを聴いているかのような、あるいは最高のライヴを数メートル離れた特等席で聴いているかのような・・・過去に聴いていたレコードから過去に聴いた事がないレベルで、音楽があるがままに生き生きと再生されていると私には感じられたのです。
そこからわかってきたのは、トラジにとって素材はひとつの要素でしかないという事です。アビーロードスタジオとの強い繋がりや、アーティストを複数かかえるVERTERE RECORDSを主宰する事で得られる経験によって、トラジには明確に目指すべきサウンドがあり、そこに到達するためにありとあらゆる素材、方法を試す。そこには、この素材、この方法であれば間違いないだろうといった感覚はありません。信じられるのは何を使ったかなどではなく自身で試した結果。最高の結果を追求した結果、XtraX MCには、テレスコピック・アルミカンチレバーが採用されました。ただそれだけの事なのです。
「なぜアルミ・カンチレバーなのですか?」その質問をしたときのトラジの不思議そうな顔が忘れられません。「最高の結果を得たからだ」彼は当然のように答え、さらにこう続けました。「私が目指しているのは、製品の完璧な客観性です。主人公はあくまで演奏家であり、録音であるべきです。完璧を達成することは不可能かもしれませんが、完璧を目指し続けることで、その最終目標に可能な限り近づけたいと思っています。」
私はこの価格帯においてアルミ・カンチレバーが採用されている事にびっくりした事を恥じ、さらに、あらためてトラジ・モグハダムの人柄と彼が設計する製品の素晴らしさに感動しました。
もちろんXtraXはお求めやすい価格のカートリッジではありませんが、この世界最高峰のカートリッジを日本の皆様に紹介できる事を心から嬉しく思います。
カンチレバーをより硬くし、針先をよりファインライン(細かく)にすると結果が良くなると思われがちですが、そんな事はありません。カートリッジの性能を決めるパラメータは無数にあり、総合的に判断する事が重要です。
高い評価を得ているVERTERE MYSTIC MCカートリッジでは、ダイヤモンドチップをチタンシャンクにボンディングした楕円針を採用していましたが、XtraXでは全く新しい天然無垢ダイヤモンドから削り出されたソリッドヌード・マイクロ楕円針が採用されました。より精密になり、レコードにさらに正確に接触し、高い性能とバックグランドを得る事に成功しました。
また、カンチレバーにはテレスコピック(伸縮式)によって強化された新しい形状のアルミ・カンチレバーを開発。クロスコイルに近い部分をテレスコピック式にすることで最適な剛性を確保すると共に、これまで以上に正確なコントロールが可能となりました。一般的に高級なMCカートリッジの周波数特性は10kHz-20kHzにかけて盛り上がってしまっているものがほとんどですが、下図のようにXtraXの周波数特性は過去に例がないほど20kHzまでほぼフラットです。この事が聴き始めの一瞬のインパクトではなく、様々なジャンルのレコードを再生した時の適応力の幅となって現れるのです。音と音楽の本質、音の基本周波数とその和声構造を理解しているトラジだからこそ導き出せた結果なのかもしれません。
カンチレバー動作安定のために巧みに設計されたクロスコイルを採用。また本体は新たに形状や素材が見直され、特殊なアルミニウム合金から削り出された1ピース構造となっており、不要な機械的振動を抑制します。さらに、ジェネレータ部は、精密に調整された4つの固定スパイク・ポイントで“フローティング”された形で本体に固定されます。
また、カートリッジの上部には、特別に設計されたダブルリング・コンタクトとコントロール・ポイントを備えた接点部があり、XtraX MCカートリッジとヘッドシェルの完璧な機械的結合を実現します。さらにVERTERE製のアームとのコンビネーションでは、簡単に取り付けられるようフロントトップにアライメント・リッジを設けました。このラインとアームヘッドシェルの先端を合わせるだけで位置調整は完了です。
現在の高性能を謳うカートリッジは、性能を追い求めるがゆえに、高音質なレコードでは素晴らしいサウンドを聴かせながらも、古い録音では若干きつく聴こえてしまったり、ジャンルによっては音楽に合わないなど、相性が出てしまう製品も少なくありません。しかし、XtraX MCをはじめとするトラジ・モグハダムが設計するカートリッジ群は、録音の新旧やジャンルを選ぶことなく、溝に刻まれた音楽をありのままに生き生きと再生します。これは、録音現場やレコード製作現場のプロたちとのつながりを大切にしてきたトラジだからこそ実現できたとても重要な特長と言えるでしょう。
トラジ・モグハダムが自信をもってお届けする、最新カートリッジXtraX MCで音楽を心行くまでどうぞお楽しみください。
型番 | XtraX MC |
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形式 | MC型 |
再生周波数特性 | 10 – 45,000Hz |
出力レベル | 0.45mV(@5cm/sec,) |
スタイラス | ヌード・マイクロ・エリプティック・ダイヤモンド(7.5×15.5μm) |
カンチレバー | テレスコピック・アルミニウム |
推奨針圧 | 2.05g(1.90 – 2.10g) |
ボディ | アルミニウム合金 |
取り付け穴間隔 | 12.7mm |
取付方法 | M2.5径 特殊3点接触 |
推奨負荷 | 850Ω - 1005Ω / 0pF – MAX 470pF |
コイル・インピーダンス | 40Ω |
ダイナミック・コンプライアンス | 12×106cm/dyne(@100Hz) |
マグネット | サマリウム・コバルト |
チャンネル・セパレーション | >28dB |
チャンネル・バランス | 1dB 以内 |
自重 | 11.2g |